1ゼロを1にする感激が味わえます

「わからない」が「わかる」、「できない」が「できる」に変わる瞬間に立ち会えるのが、日本語教師の仕事の最大の醍醐味です。しかも、その手助けをするのは、ほかならぬあなた自身です。「私も大学生です」の「も」の意味がわかり、それが自分で言えたときの喜びに満ちた顔、目の輝き、ほのかに紅潮した頬、そういった学習者の変化を目にすると、この仕事をしていてよかったと思わずにはいられなくなります。無から有が生まれる瞬間を自分の手で作り出せる仕事は、世界中を探してもそんなに多くはないでしょう。日本語教師は、その稀有な仕事のひとつです。

2あらゆる経験が生かせます

今までの人生で、あなたが一番輝いていたのはいつですか。最もつらかった時期は何をしていた頃ですか。良くも悪くも、今の私を形作っているのはこれだという経験は何ですか。仕事でも勉強でも子育てでも介護でも趣味でも、これまでの人生を棚卸しし、自分の特徴や強みを自分でつかんでください。日本語教師には、その特徴や強みが生かせる職場が必ずあります。
日本語を勉強しようという人は、まさに十人十色です。年齢も経歴も趣味も到達目標も、「いろいろ」としか言いようがありません。ですから、学習者が求める内容もさまざまで、日本語教師は決まったことを繰り返していればいいという仕事ではありません。学習者のタイプに合わせて、あなたが今まで経験してきたことを総動員して、授業を組み立てていくのです。

3世界が広がります

日本語学習者は世界中にいて……そんな通俗的な意味で言っているのではありません。いろんな経歴を持ったいろんな目的の学習者に教えていくには、いろんな知識や情報が必要です。政治、経済、社会、歴史、芸能、芸術、科学技術、世の中のすべてが教材になりうるといっても過言ではありません。漫然と教科書をなめるように進めていくだけではなく、そこに教師のオリジナリティーを発揮すると、魅力的な授業になるのです。こういう授業を作っていこうとするには教師自身の成長が欠かせません。ですから、日本語教師をしていると必然的に自分自身の世界が広がっていくのです。

4教える間に教えられます

「人は教える間に教えられる」とはよく言われますが、それを地でいくのが日本語教師です。学習者には、あなたより年長の人も、あなたとは全く異質な世界を生きてきた人も、あなたとは発想のしかたが根本的に違う人もいます。日本語を教えるという面では、そういう人たちに対して「先生」ですが、あなた自身が気づかなかったいろんなことを気づかせてくれるという面では、そういう人たちこそ「先生」なのです。あなたが心の感度を高くしておけば、日々教えられることばかりです。

5日本を代表する人物になれます

日本を代表する人物って、誰だと思いますか。天皇陛下? AKB48? イチロー? 宮崎駿? 違います。日本語学習者にとって、日本を代表する人物は、目の前にいる日本語教師、すなわち、あなたなのです。特に海外で教える場合、学習者にとってあなたが生まれて初めて接する日本人だというケースがよくあります。とっても光栄なことだと思いませんか。もちろん、責任重大ですけど。
日本国内で教える場合でも、学習者にとって一番身近にいて、自分の日本語の未熟さを恥ずかしがらずに気軽に話しかけられ、何でも相談できるのが日本語教師です。いわば、日本での生活のナビゲーターのような役割を担うことになります。

6愛国心が芽生えます

きな臭い意味での愛国心ではありません。純粋に「ニッポンがんばれ!」っていう気持ちが湧き上がってきます。
日本語教師は、日本のよさを世界中の学習者に向けて発信する役割も担っています。また、日本という国が輝きを失ってしまったら日本語を勉強しようという人もいなくなり、日本語教師はおまんまの食い上げになってしまいます。ですから。日本の美しさ、すばらしさに敏感になり、「日本がよりよい国になるには…」ということを心の底から考えるようになります。これこそ、真の愛国心ではありませんか。
このように、日本語教師は大きな可能性を秘めた仕事です。もちろん、楽しいだけの仕事ではありません。しかし、苦しさや辛さの先に、必ず人生の高みに立てる喜びがあります。